↓これ。技術書か?と聞かれると技術書ではない。どっちかというとビジネス書よりの本です。
どんな本か。
コンサル屋さん直伝の問題解決の本。問題解決の考え方・エッセンスといった概念的なことから,進め方・思考ツール,フレームワークの使い方といった実践的なことまでカバーしています。特に,本書では問題解決の流れが手順化されて解説されており,このプロセスに従うことで誰がやっても一定の結果が出そうだな。 と感じました。
- どんな本か。
- どこがどう面白かったか
どこがどう面白かったか
問題解決の架空のストーリー「上賀茂製作所」がシンプルに面白い。
いきなり問題解決とは関係ない話をします。
本書は全部で7章ありますが,それぞれの章の冒頭で架空の電機メーカー「上賀茂製作所」の問題解決のお話が展開されます。上賀茂製作所の社内コンサルである主人公「戸崎」が,赤字を出している部門「メデイア事業部」の問題解決に挑むというストーリーで,章ごとに「上賀茂製作所のストーリーパート」と「問題解決の手法解説パート」に分かれています。
(こんなかんじ。↓ )
- 第一章 : 問題解決の手順
- 戸崎が,社長から「メデイア事業部の赤字の問題解決してこい」と言われる導入ストーリー
- 問題解決の手順・全体観についての解説パート
- 第二章 : 問題を特定する
- 戸崎が中心となって,メデイア事業部の赤字の問題がどこにあるのか特定するお話
- 問題特定の手順・手法についての解説パート
- 第三章 : 原因を追求する
- 前章で特定した箇所について,掘り下げて原因追及するお話
- 原因追及の手順・手法についての解説パート
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そしてまずシンプルにこのストーリーが面白いです。 要約すると「主人公が適切な問題解決手順に則り,最適な手法を巧みに駆使し,メディア事業部を再興に導く」という,ある種プロジェクトXのような話で「男たちは,泥臭く暑苦しい努力の結果,遂に問題を解決するに至ったのだった」みたいなアツい挑戦ストーリーです。
余談ですが話中で HD-DVD 対 Blu-ray 論争が展開されててちょっと時代と懐かしさを感じました。そういや有ったなぁ,そんなもん。
問題解決は「手順」と「手法(その時その時で使うツール・フレームワーク)」が大事らしい。
本題の問題解決の話をします。
本書を読んで,「問題解決は『手順』と『手法(その時その時で使うツール・フレームワーク)』が大事なんだな」と感じました。
問題解決の「手順」
まず「手順」について。本書では,問題解決の正しい手順について下記のように述べています*1。
(中略) 問題解決の手順とは,
(1) Where … 問題がどこにあるのか
(2) Why………その問題の原因はなにか
(3) How ……… ではどうすればよいか
の3ステップで考えるということである。
また,逆にやってはいけない手順として「How思考」を挙げていました*2。
深く考えずに目先の対策に飛びついてしまう思考特性のことを,私達は「HOW思考」と読んでいる。文字通り,HOW(どうすれば?)から 先に考えてしまうことを指す。「HOW思考」に陥ると過去からの第性や思いつきで,あれこれ対策を連打してしまうことになる。
…なんとも耳の痛い話です。自分がこれまでやったヤラカシを振り返ってみると,「確かにあのときのアレはHow思考だったな」と思い当たる節だらけです。
そして本書では序盤に「『Where -> Why -> How』の流れが大事だよ」と説いたうえで,次章以降は最後まで一貫して*3「Where」「Why」「How」の各工程で具体的に何をすればいいかが解説されており,非常に頭にスッと入ってきました。
問題解決の「その時その時で使うフレームワーク・切り口」
また,Where・Why・Howの各プロセスで,それぞれどこに問題があるのか,その問題の原因はなにか,どうすればよいかを考える必要がありますが,そのお助けツールとしてのフレームワーク・切り口とその使い方が詳しく解説されていました。
特に,
* どの段階で,どのフレームワーク・切り口を使うのが良いのか? と
* 実際にどうやって使うか?の例
が載っていたのが,非常にわかりやすかったです。例によって上賀茂製作所のストーリー中で,フレームワークを使った分析を行っており,成る程こうやるのか。と感嘆しました。
本書で紹介されていたフレームワークを一部紹介すると
Where : どこに問題があるのか を特定するために
- 4W (When, Where, Who, What)
- ビジネス上の問題解決5つのテーマ(①売上,②コスト,③技術・性能,④製造・購買,⑤業務)
- 4M (Man, Material, machine, Method)
- ロジックツリー
- ★問題所在マトリクス(どこどこ分析)
Why : その問題はなにか を特定するために
- ★因果の構造図(なぜなぜ分析)
- 対立概念で分ける
- 数式や概念で因数分解する LISS(Linear Independenxe and Spanning Sets)
- プロセスで分解する
- 既存のフレームワークを使う
- 4P(Product, Price, Place, Promotion)
- ヒト・モノ・カネ
- QCD (Cost, Quality , Delivery)
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…その他多数……
★ : 特に重点的に解説されてたフレームワーク
上記はほんの一部です。特にWhere,Whyの特定するプロセスでは,その問題の原因だけ を適切に浮かび上がらせる「切り口」が非常に重要です。しかし一方で「フレームワーク多すぎで,何処で何を使えばいいかわからん!!!」となってしまいがちなのも実情。
だからこそ,しっかり解説されてるのが良かったです。
「チームでの」問題解決を意識しており,かなり実用的だなと感じた。
「ビジネスパーソン必須の仕事術」の名の通り仕事上での問題解決を想定しており,チームで問題解決活動をする際のエッセンスについても書かれていたのが印象的でした。
例えばデカい問題Aが有ったとします。
コレの原因は,原因①(主因)と原因②原因③…から成っているとします。
チームで問題解決を行う際に発生しがちなトラブルとして,問題解決がある程度進んだところで,偉い人の後出しジャンケンで「なんで今,原因①の対策やってるんだ,原因②のほうが深刻※だからコッチを先に対策打たないと!!!!!!!!!!!!」と,今までの取り組みをひっくり返えされ振り出しに戻るケースがありますが,こうならない為の要点についても述べられていました。
※「原因②のほうが深刻」というのは偉い人の思い込みで,実際は原因①が主因
そもそも後出しジャンケンされないための策として
- メンバー全員で問題に対する共通認識を持つこと
- 要所要所で偉い人の同意を取り付けること
それでも後出しジャンケンされたときに,これを跳ね返すための策として
- 「イヤイヤ,問題の全体像はこんな感じで(図を示す),その中でも原因①が最も支配的です(バックデータ示す)。なのでまずこれを片付けるのが効果的なんです。原因②はその次!!!!!!!!」と跳ね返すための,効果的なデータの集め方・示し方 にも触れられていました。
読んでなぁるほどなぁ。と思。
「問題解決テクニックって一般化できるもんやな。」という気付きがあって面白かった。
ぶっちゃけ「問題解決の本」と聞いたとき,抽象度が高く掴みどころのないお気持ち精神論のようなこと書いてるんだろうなと思っていました。
一方,私の業務で実際に発生する問題といえば,例えば「作った測定機をいざ使ってみたら怪しい値が出てくる」「製品が納期に間に合わない」だとか,その時その時で問題も原因も解決策もケース・バイ・ケース。もちろん隣の部署の同期と私の抱える問題は全く違います。ましてや会社・業界・業種・ポジションが違えば,むしろ同じ問題を見つけるほうが難しいでしょう。
幼稚園教諭の旧友がオムロンの測定器に悩ますこともなければ,逆に僕が預かった子どもたちの安全に神経を尖らせる機会なんてそうそう無いわけです*4。
そんな中「世の中の全ての問題を解決する銀の弾丸みてぇな『問題解決』手法,ホンマにあるんかね?????」と懐疑的でした。
結論から言うと,ありました。それが先に述べた「手順」と「手法(その時その時で使うツール・フレームワーク)」なわけですが,疑ってた手前「はえ~~あるもんなんだな。銀の弾丸」と感心のような感想を抱きました。
おわりに
この本は
- シンプルにお話が面白いですよ
- 問題解決は「手順」と「手法(その時時で使うツール・フレームワーク)」が大事らしいですよ。
- もちろんこの手順について解説されていますよ。
- 同様に手法(その時時で使うツール・フレームワーク)についても解説されていますよ。
- また「チームでの」問題解決を意識したテクニックについても解説されていますよ。
- 問題解決って一般化出来るんですね,おもしろ。
でした。
…ちょっと長く書きすぎたな。このぐらいにします。
というわけで問題解決の本でした。
*1:問題解決――あらゆる課題を突破する ビジネスパーソン必須の仕事術 – 英治出版, P30
*2:問題解決――あらゆる課題を突破する ビジネスパーソン必須の仕事術 – 英治出版, P36
*3:一部例外(問題提起型のWhat)があるけど,それは置いといて
*4:安全工学という側面で見れば有るかもしれんが…